Benthos Research 深海生物の魅力

深海の厳しい環境に生息する底生動物の知られざる生態

癒し系の生物がたくさん

全ての生命の始まりであることから「母なる海」と呼ばれることもありますが、水圧というハードルがあるため私たちが知ることのできる海は浅いそうに限られていました。

しかし、近年は深海探査の技術が著しく、これまで知られることのなかった深海にもようやく光が当たり始め、厳しい環境で生活するさまざまな生物が注目されるようになりました。

例えば深海底にある400度近くの熱水の噴出し口「熱水噴出孔」周辺には猛毒の硫化水素が多く存在していますが、スケーリートットやハオリムシはこの猛毒を分解・無毒化する体の仕組みを持つことでこのエリアで生息しています。

明確な定義はないものの、一般的に「深海」という場合、それは200m以深を指しており、海全体の体積の80%を占めています。すなわち私たちの知らない世界がまだまだ海には広がっているということです。

日本には最大潜航深度7,000mでの調査が可能な世界トップレベルの無人探査機「かいこう7000 Ⅱ(独立行政法人:海洋研究開発機構)」があり、国内外の深海域での調査が着実に進みつつあり、今後も謎多き世界の解明が期待されています。

ところで海は水深によって5段階に階層に分けられていることをご存知でしょうか?海面から200mまでを「表層」といいますが、150m以深の段階で海中に届く太陽光は1%にまで減少しており、生物の餌となる植物プランクトンが光合成を行える限界になります。

水深200~1,000mは「中深層」と呼ばれていますが、海の生物が太陽光を感じることができるのはここまでとなります。水深1,000~3,000mの「漸深層」になると光の届かない暗闇となり、水深3,000~6,000mの「深海層」、それ以上は「超深海層」となり人間にとって未知の領域が広がっています。

人間が深海を探査する上で最大のハードルとなるのが水圧です。水深1,000mでの水圧は約101気圧(1平方cmあたりに100kg以上の重さがかかる換算)と非常に苛酷な環境となるのです。深海層になると水圧で生物の細胞は潰れてしまい、たんぱく質が変成してしまうほどです。

生身の人間ならまず到達できない非常に厳しい環境に深海生物が適応できるのはどうしてでしょうか?それは深海生物には浮力を調整する浮き袋という器官が備わっているのですが、この中を脂や塩化アンモニウムなどで充たすことにより、外部からの圧力と外に押し出す力の均衡を図っているのです。

ダイオウグソクムシやメンダコも展示!沼図港深海水族館

2011年12月、深海生物の宝庫として世界的にも知られる駿河湾(水深2,500m)沿いに深海生物を専門とする沼図港深海水族館が開館しました。沼図港に寄り添うように建つ同水族館には、多数の深海生物にくわえ、シーラカンスの冷凍標本など貴重な展示が見られます。

なかでも人気なのが、2013年にマスコミで大きく報道されたダイオウグソクムシです。長期間の絶食で注目されたのは鳥羽水族館(三重県)のダイオウグソクムシですが、沼図港深海水族館にはこのダイオウグソクムシとオオグソクムシの両種が展示されています。

日本近海に生息するものオオグソクムシは10cm程度にしか成長しませんが、メキシコ湾の深海で採集されるダイオウグソクムシは最大で50cmを超えるものも存在します。低水温で生活するためか、活発に動くことはありません。深海の海底に横たわる魚の死体などを食べることから「海の掃除屋」とも言われます。

同水族館でダイオウグソクムシと並んで人気なのが人の顔のように見えるメンダコです。私たちに馴染みのあるタコと違い、8本の足の間にあるスカート状の膜が足の先まで広がっています。また吸盤が一列しかなく、墨袋を持たないことも大きな特徴です。浮遊性のタコであるメンダコは耳を羽根のようにばたつかせたり、スカートのように脚を広げることで浮力を保っています。