2004年度日本ベントス学会奨励賞


奨励賞選考ワーキンググループ代表岩崎敬二会員からの提案に基づいて、2004年6月27日の運営委員会において審議の結果、
今年度の「日本ベントス学会奨励賞」を「福田宏会員」および「木村妙子会員」の2名とすることを決定した。

[ 授賞理由] 
福田宏会員:軟体動物の分類学的研究を精力的に行っており、多くの論文の中に表れているその業績は、多くの新種を記載し
 問題とされている分類群の解明にも取り組んでおり、日本の軟体動物相の解明に多大の貢献をされています。また、環境問題
 にもその専門家としての立場から積極的に取り組み、この面でも貢献は大きいと評価されます。
木村妙子会員:二枚貝類の底生初期生活に関する研究を精力的に行い、河口域ベントスの、とくに二枚貝の個体群動態の解明に
 ついて成果を上げられ、その後、汽水域および干潟の貝類の在来種の保全や移入種の問題に関してベントス研究者の関心を

 呼び起こし、問題点を指摘し続けるなどの功績は多大なものがあります。

 以上の理由により、今後の研究の発展を期待しつつ、本年度の奨励賞を授与します。(日本ベントス学会会長 向井宏)


福田 宏 会員

木村妙子 会員
 
 [ 略歴 ]
 1965年7月18日 山口県佐波郡徳地町生まれ
 1992年3月 東京都立大学理学部生物学科卒業
 1994年3月 東京都立大学大学院理学研究科
         生物学専攻修士課程修了
 1994年4月 東京都立大学理学部生物学科研究生
 1995年4月 東京都立大学大学院理学研究科
         生物学専攻博士課程入学
         日本学術振興会特別研究員DC
 1998年3月 同上 修了,博士(理学)学位取得
 1998年4月 東京都立大学理学部生物学科研究生)
 1998年11月 日本学術振興会特別研究員−PD
 2000年8月 岡山大学農学部 助教授(現在に至る)

 [ 略歴 ]
 1965年生まれ
 1988年 三重大学水産学部卒業
 1994年 三重大学大学院生物資源学研究科博士課程修了
      学術博士
 1996年 日本学術振興会特別研究員
 2002年 三重大学生物資源学部講師
 2003年 三重大学生物資源学部助教授(現在に至る)

[ 研究概要 ]
軟体動物分類学/保全学の現在と未来

軟体動物門の系統においては脊椎動物全体の2倍を遥かに上回る10万種以上の生物が多様に放散進化した。その結果軟体動物は,海・淡水域はもとより陸上の砂漠をも含むあらゆる地球環境に棲息している。殊に汽水や陸水の湿地は,この爆発的な放散進 化に不可欠の,多彩な環境条件を提供してきた。しかし近年,日本の湿地は,先を急 ぐ開発により改変され,水質汚濁の進行とともに,あとかたもなく消滅する寸前にある。
 その一方で軟体動物には,アルファ分類すらも整備されていないグループが無数に存在し,未記載種の殆どが未記載のまま絶滅している実態が世界で再三指摘されて久しい。棲息環境が未知であるがために,死殻以外に生きた個体が発見されず,分類学的な位置が確定できないのは,国内でもごく普通のことである。私は,このような現状にある軟体動物の全グループを研究対象として,下記3種類の課題を中心に,発生様式と内部形態の解剖学的な諸形質に着目した分類学的研究(既存の分類体系の改訂)を進めるとともに,軟体動物群集の保全生物学的研究と,棲息環境に対応した群集構造の生態学的研究を行ってきた。
 1.河口・内湾棲貝類のレッドデータブック
 2.Assiminedae カワザンショウ科(腹足綱:吸腔目)の
   多様性
 3.異鰓類の起源と系統進化
[ 研究の概要 ]
絶滅が危惧される貝類と移入貝類の生態

[ 主要論文,出版物 ]
木村妙子・岩崎敬二・大越健嗣・小菅丈治(印刷中)博物館
 ・水族館の収蔵標本から見た日本の海洋移入ベントスの
 現状.日本ベントス学会誌
木村妙子 (2002)コウロエンカワヒバリガイ〜二次的な
 移出が心配される内湾の外来二枚貝.日本生態学会編,
 外来種ハンドブック,地人書館.
木村妙子 (2001) コウロエンカワヒバリガイはどこから来た
 のか?日本付着生物学会編,黒装束の侵入者−外来付着性
 二枚貝の最新学,pp47-69,恒星社厚生閣 .
Kimura, T., Tabe, M., and Y. Shikano (1999) Limnoperna
 fortunei kikuchii Habe,1981 (Bivalvia: Mytilidae) is a
 synonym of Xenostrobus securis (Lamarck,1819):
 Introduction into Japan from Australia and/or New
 Zealand. VENUS, 58: 101-117.
木村昭一・木村妙子(1999).三河湾および伊勢湾河口域に
 おけるアシ原湿地の腹足類相.日本ベントス学会誌, 54:
 44-56.


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